故人を安らかに送り出す際、棺に故人が愛用していたものや好きだったものを納める「副葬品」という習慣があります。これは現代だけでなく、日本の歴史の中でも古くから行われてきたものです。なぜ人は、亡くなった方の棺に品物を納めるのでしょうか。そこには、時代を超えて受け継がれる人々の思いと、その変化が見られます。副葬品の歴史は大変古く、遡れば古墳時代にまでたどり着きます。この時代の大きな古墳からは、鏡、玉、武器、馬具など、様々な副葬品が大量に発見されています。これらの品々は、故人が生前に持っていた権力や財力を示すものであり、また死後の世界でも現世と同じように生活を送れるように、あるいは来世への旅路で困らないようにとの願いを込めて納められたと考えられています。当時の副葬品は、単なる個人の持ち物というよりは、権威や富を象徴する側面が強かったと言えるでしょう。時代が下り、仏教が広まるにつれて、副葬品に込められる意味合いも変化していきます。死後の生活のためという現世利益的な考え方から、故人への供養や追善供養の意味合いが強くなっていきました。故人が安らかに旅立ち、極楽浄土へ行けるようにとの願いが込められるようになります。現代の副葬品は、古墳時代のような権威を示すものではなく、故人が生前大切にしていた愛用品、好きだったお菓子やタバコ、家族からの手紙、写真などが中心です。これは、物質的な豊かさよりも、故人の個性や人柄、そして遺族との絆を大切にする現代の価値観を反映していると言えるでしょう。火葬が主流となった現代では、安全に燃焼できるものという制約もありますが、「故人を思う気持ち」を形にするという根底にある意味は、時代を超えて受け継がれています。副葬品に込められた歴史とその意味を知ることで、現代の弔いの心遣いをより深く理解できるはずです。
副葬品の歴史と意味