葬儀・告別式の終盤、出棺を前にして行われる喪主の挨拶は、故人様とのお別れの儀式における最も重要な場面の一つです。お通夜の挨拶が主に弔問への感謝と翌日の案内が中心であったのに対し、告別式の挨拶は、より多くの参列者に向けて、故人に代わって生前の御礼を述べ、最後のお別れを告げるという、非常に重い意味合いを持ちます。この挨拶で最も心を込めたいのが、故人様の人柄を偲ばせる具体的なエピソードを語る部分です。それは、参列者一人ひとりが故人との思い出を心の中に蘇らせ、共に別れを惜しむための大切な時間となります。例えば、「父は口下手で不器用な人間でしたが、家族の記念日には必ず花を買ってきてくれるような、優しい人でした」「母はいつも『人は笑顔が一番』と言い、どんな苦しい時でも私たち家族を明るく照らしてくれる、太陽のような存在でした」といった、飾らない言葉で語られる思い出は、何よりも深く人の心を打ちます。このエピソードに続けて、「皆様からいただく温かいお言葉の一つひとつが、故人がいかに幸せな人生を送らせていただいたかの証しだと感じております」と、参列者への感謝を改めて伝えます。そして、「残された私ども家族も、故人の教えを守り、力を合わせて生きていく所存でございます。皆様におかれましても、今後とも変わらぬご指導ご鞭撻を賜りますよう、お願い申し上げます」と、今後の支援をお願いする言葉で締めくくります。この挨拶は、故人の人生を総括し、残された家族が新たな一歩を踏み出す決意を表明する場でもあります。事前に内容を考え、メモを用意しておくことを強くお勧めしますが、当日は感情が高ぶり、うまく話せないかもしれません。それでも構いません。大切なのは、故人への愛と、集まってくださった人々への感謝の気持ちです。その心が、言葉以上に雄弁に、あなたの思いを伝えてくれるはずです。
葬儀告別式での挨拶、感謝を伝える言葉