「友引の日は葬儀を避けるべき」という慣習は広く知られていますが、では、告別式の前夜に執り行われる「お通夜」についてはどうなのでしょうか。この点については、結論から言うと、一般的に「お通夜は友引の日に行っても差し支えない」とされています。その主な理由は、友引の「友を引く」という迷信が、主に「故人様をあの世へ送り出す直接的な儀式」、すなわち出棺と火葬を伴う葬儀・告別式に関連付けられているからです。お通夜は、本来、近親者が故人様に寄り添い、邪霊などから守りながら最後の夜を共にするという宗教的な意味合いを持つ儀式です。現代では、日中の告別式に参列できない弔問客のための時間という意味合いも強まっていますが、いずれにせよ「故人を送り出す」という最終行為ではないため、友引の禁忌には抵触しないと解釈されているのです。むしろ、この慣習を逆手に取った、合理的で現実的なスケジュールが組まれることも少なくありません。例えば、金曜日にご逝去された場合、火葬場が休業する友引の土曜日を挟むことで、翌日の日曜日に告別式を設定できます。この場合、土曜日にお通夜を営むことになりますが、この日程は、週末が休日である多くの人々にとって参列しやすいという大きなメリットがあります。火葬場の休業日を、弔問客を迎え入れるための時間として有効活用するこの方法は、特に都市部を中心に広く受け入れられています。ただし、この考え方が万人に共通するわけではありません。地域やご家庭の慣習、あるいは特に信心深いお年寄りの中には、お通夜であっても友引の日を避けたいと考える方がいる可能性もゼロではありません。最終的な日程を決める際には、ご遺族の意向を第一に尊重し、地域の慣習にも詳しい葬儀社の担当者とよく相談することが、後々のトラブルを避ける上で最も賢明な方法と言えるでしょう。