葬儀銘柄が今、もっとも力を入れているのが「葬儀の前」と「葬儀の後」を含めたビジネス領域の多角化です。いわゆる「終活」市場の取り込みであり、これが企業のLTV(顧客生涯価値)を飛躍的に向上させています。従来の葬儀ビジネスは、訃報を受けてから始まる「待ち」の商売でしたが、現代は生前から顧客と接点を持ち、信頼関係を築く「攻め」の姿勢が求められています。その代表的な手法が会員制度であり、ティアの「ティアの会」やサンライフの互助会などがこれにあたります。生前に葬儀の予約や相談を受けることで、受注の確実性を高めるだけでなく、相続手続きや遺言作成、介護施設の紹介といった周辺ニーズを掘り起こすことができます。投資家にとって、この多角化は収益の安定化と成長の源泉として高く評価されます。例えば、鎌倉新書が運営する「相続相談」の成約単価は葬儀紹介を上回ることもあり、プラットフォームの収益性を押し上げています。また、葬儀後のビジネスである「遺品整理」や「特殊清掃」、さらには不動産の売却支援も成長分野です。身寄りのない高齢者が増える中で、死後の事務一切を引き受ける「死後事務委任契約」の需要も高まっており、法律事務所と提携した新サービスの開発も進んでいます。これにより、葬儀会社は単なるイベント設営会社から、人生のエンディングを総合的にプロデュースする「ライフサポート企業」へと変貌を遂げようとしています。株価の分析においては、売上高に占める非葬儀部門の割合や、その成長率が新たな注目指標となっています。多角化に成功している企業は、家族葬による単価下落の影響を軽微に抑え、逆に利益を伸ばしています。一方で、多角化には専門知識を持つ人材の確保や、新たな営業拠点の設置といったコストもかかります。中途半端な多角化は経営資源の分散を招くため、自社の強みを活かしたシナジーが発揮できているかを見極める必要があります。例えば、冠婚葬祭互助会大手のくら(アルファクラブなど、非上場だが影響力大)は、結婚式場で培った宴会ノウハウを法要後の食事提供に活かすなど、リソースの有効活用を行っています。投資家としては、これらの多角化戦略が単なるスローガンに終わっていないか、具体的な成約数や利益貢献度を財務諸表から読み取る必要があります。多死社会における勝者は、葬儀の数だけを追う企業ではなく、故人と遺族のあらゆる「困りごと」を解決できる企業になるでしょう。このサービス領域の広がりこそが、葬儀銘柄の将来的なバリュエーション(企業価値評価)を引き上げる最大の要因となります。
終活関連サービスの多角化が進む葬儀企業の未来