葬儀業界は現在、インターネット仲介業者の台頭による「価格のデフレ」と、消費者庁などによる「不当表示の監視強化」という2つのプレッシャーにさらされています。かつては地域ごとの言い値が通った市場も、今やスマートフォン1つで全国の相場が比較できる時代です。このような過酷な競争環境において、投資家が選ぶべき「強い銘柄」には共通する条件があります。第1に、独自の集客チャネルを持っていることです。ポータルサイト経由の受注は、紹介手数料を支払う必要があるため、利益率を圧迫します。これに対し、自社の会員制度や地域での高い知名度により直接依頼を受けることができるティアやサンライフのような企業は、高いマージンを維持できます。第2に、オペレーションの標準化による高い生産性です。葬儀は案件ごとに内容が異なりますが、バックフローを徹底的にシステム化し、パートスタッフでも一定のクオリティを維持できる体制を整えている企業は、労働力不足の中でも利益を出せます。第3に、コンプライアンス(法令遵守)体制の構築です。葬儀費用を巡るトラブルは絶えず、行政指導を受ける企業も後を絶ちません。そのような中で、燦ホールディングスのように透明性の高いディスクロージャー(情報開示)を行い、消費者からの信頼を得ていることは、目に見えない最大の資産となります。投資家としては、過去に消費者トラブルを起こしていないか、料金体系が明快であるかをチェックすることが、リスク回避に繋がります。また、規制の側面では、孤独死の増加に伴う「行政解剖」や「公費解剖」に関連する搬送業務の受託など、公共セクターとの連携を深めている企業の安定感も見逃せません。株価については、過度な低価格を売りとする銘柄よりも、適正価格で高い顧客満足度を実現し、リピート紹介を確保している銘柄の方が、長期的なリターンは安定する傾向にあります。さらに、最近では「グリーフケア(遺族の心のケア)」に特化したカウンセリングサービスの提供など、形のないサービスへの対価を得る仕組み作りも進んでいます。これは物売り(棺やお花)から事売り(体験や心のケア)へのシフトであり、原価率の低い高収益モデルへの転換を意味します。生き残る銘柄は、変化する消費者の心理を敏感に察知し、それを素早くサービスに反映させることができる機動力を持っています。価格競争という荒波の中で、安売りに走らず、価値を提供し続ける信念を持つ企業こそが、最終的に市場の勝者となり、株主に対しても報いることができるのです。多死社会という巨大なマーケットにおいて、真の実力を持つ企業を見極めることが、投資の成功へと直結します。