葬儀業界は現在、戦国時代さながらのMアンドA(合併・買収)の嵐の中にあります。かつては全国各地に存在する個人経営の葬儀社が地域独占的に営業していましたが、後継者不足や市場環境の変化により、上場大手による買収が相次いでいます。この動きを牽引しているのが、燦ホールディングスやきずなホールディングス(7086)といった資本力のある企業です。MアンドAの最大の目的は、エリアシェアの拡大とスケールメリットの享受です。葬儀業は、一定の地域内に複数の拠点を持つことで、車両の共通利用やスタッフの効率的な配置が可能になります。また、棺や祭壇などの資材を大量一括購入することで、原価率を下げることができます。投資家にとって、MアンドAを積極的に行う銘柄は、自律成長(オーガニック成長)以上のスピードで業績を拡大させるポテンシャルを持っています。特に、きずなホールディングスは「家族葬のファミーユ」ブランドを軸に、MアンドAと新規出店を組み合わせた高速成長を実現しており、成長株として注目されています。買収された側にとっても、上場企業の管理体制下に入ることでコンプライアンスの強化やデジタル化が進み、経営の安定化に繋がるというメリットがあります。しかし、MアンドAには「のれん代」の計上や、買収後の文化統合(PMI)といったリスクも伴います。特に葬儀は地域性が強く、その土地の風習や人脈が重要視されるため、無理なブランド統合は既存顧客の離反を招く恐れがあります。そのため、あえて買収先の旧社名を残したままグループ運営を行うなど、各社は慎重な戦略を取っています。株価の側面では、買収発表直後は資金流出や希薄化への懸念から売られることもありますが、シナジー効果が見えてくると大きく上昇するパターンが多く見られます。また、業界再編のもう1つの主役は異業種からの参入です。例えば、鉄道会社や生活協同組合、さらには流通大手のイオンなどが葬儀事業を強化しており、既存の葬儀専門銘柄にとっては強力なライバルとなっています。これらとの競争に勝つためには、資本力を活かしたMアンドAによるネットワーク構築が不可欠です。今後、死亡数がピークを迎えるまでの15年から20年の間に、業界は数社の大手グループに集約されていくと予想されます。投資家は、どの企業が「プラットフォーマー」として生き残り、どの企業が買収のターゲットになるかという視点で、銘柄のポジショニングを分析する必要があります。MアンドAは、葬儀銘柄の将来図を描く上でもっともダイナミックな要素であり、その成否が長期的な株主価値を決定づけることになります。
業界再編を加速させる葬儀銘柄のMアンドA戦略