葬儀関連銘柄の中でも、極めて特殊かつ強力な参入障壁を持つのが廣済堂ホールディングスです。同社は印刷事業や人材事業を主軸としてきましたが、現在では子会社の東京博善が運営する火葬場事業が最大の収益源となっています。特筆すべきは、東京都内6区(23区内)にある火葬場の大部分を同社グループが保有しているという事実です。都心部において、火葬場を新設することは住民感情や用地確保の面からほぼ不可能であり、同社は事実上の独占的地位を享受しています。このビジネスモデルは、死亡数が確実に増加する中で、価格決定権を握っているという点で投資家にとって極めて魅力的です。火葬は法律で義務付けられた不可避のプロセスであるため、景気に左右されることなく安定した稼働が見込めます。近年、廣済堂ホールディングスは、火葬場に併設された式場の利用率向上や、富裕層向けの「特別室」の拡充により、客単価の向上に成功しています。また、火葬業務だけでなく、葬儀社に対する周辺サービスの提供や、DXを活用した予約システムの効率化も収益に寄与しています。株価については、かつては印刷事業の低迷が重石となっていましたが、現在は「火葬場銘柄」としての評価が定着し、割安感が見直される局面が続いています。さらに、同社は物言う株主(アクティビスト)の関心を引くことも多く、企業価値向上のための施策が期待されやすい側面もあります。投資家が注意すべき点としては、公共性の高い事業ゆえの規制リスクや、都による火葬料金の公的統制の可能性ですが、現時点では高い収益性を維持しています。また、廣済堂グループ全体としてのシナジーをいかに発揮できるかも重要です。人材事業で培ったノウハウを葬儀スタッフの派遣に活かしたり、印刷技術をメモリアルブックの作成に繋げたりといった展開も視野に入っています。このように、インフラとしての強固な基盤を持つ廣済堂ホールディングスは、葬儀業界のバリューチェーンにおいて最も上流に位置しており、多死社会の恩恵を最も直接的に享受できる銘柄の1つと言えるでしょう。安定したキャッシュフローを生み出すこの事業を軸に、同社がいかにポートフォリオの最適化を進め、株主還元を強化していくかが、今後の株価上昇のドライバーとなります。
東京の火葬場を独占する廣済堂ホールディングスの強み