現在の葬儀市場における最大の変化は「家族葬」の圧倒的な普及です。これは親族やごく親しい友人だけで行う小規模な葬儀であり、従来の300人、500人が参列する一般葬とは対照的です。この流れは、葬儀関連銘柄の収益構造を根本から揺さぶっています。投資家が最も注視すべきは、売上高の構成要素である「施工件数」と「平均単価」のバランスです。家族葬は参列者が少ないため、飲食代や返礼品の売上が大幅に減少します。また、大きな式場が必要なくなるため、式場使用料も低下します。その結果、1件あたりの売上高は一般葬の半分以下になることも珍しくありません。しかし、一方で家族葬には「利益率の維持」という側面もあります。大規模な葬儀は準備や運営に多くの人手が必要ですが、家族葬は少人数のスタッフで対応可能です。また、専用の小規模ホールは建設コストや維持費が安く、投資回収が早いというメリットがあります。ティアや燦ホールディングスといった大手各社は、現在この家族葬専用ホールの出店を加速させています。株価を分析する上では、単価の下落を「施工件数の増加」でどこまでカバーできているかが焦点となります。死亡数自体は増加傾向にあるため、市場全体の「パイ」は広がっていますが、そのシェアを誰が取るかが重要です。また、最近では家族葬であっても「祭壇だけは豪華にしたい」といったこだわりを持つ層も増えており、企業はいかにオプションサービスで単価を積み上げるかに腐心しています。例えば、故人の趣味を反映したオリジナル祭壇や、プロの演奏家による音楽葬、高品質なメモリアルムービーの作成などが挙げられます。これらの付加価値サービスは原価率が低いため、成功すれば利益率の大幅な改善に繋がります。一方で、価格に敏感な層をターゲットにしたネット系仲介業者が提示する「一律定額プラン」は、ブランド力を持たない地方の小規模業者にとって脅威となっており、業界の淘汰を早めています。投資家としては、低価格競争に巻き込まれる銘柄ではなく、独自のサービスやブランド力で「選ばれる理由」を持っている銘柄を選別すべきです。家族葬という流れは、一見すると葬儀会社にとって逆風に見えますが、効率的な経営とクリエイティブな提案力を持つ企業にとっては、市場シェアを拡大する絶好の機会でもあります。このパラダイムシフトをいかに勝ち抜くかが、2020年代後半の葬儀銘柄の勝敗を分けることになるでしょう。
家族葬の普及が葬儀銘柄の収益性に与える影響