私は葬儀ディレクターとしてこれまで300件以上の無宗派葬儀を担当してきましたが、最近の傾向として、単なる簡素化ではない「意味のある自由」を求めるお客様が急増していると感じます。かつて無宗派といえば、直葬に近い質素なものが多かったのですが、現在はオーダーメイドの結婚式のように、1つひとつの演出に深い意味を込めるケースが主流です。私たちが打ち合わせで1番大切にしているのは、故人の「人生のテーマ」を見つけ出すことです。例えば、海を愛した方であればブルーの布と貝殻で祭壇を彩り、波の音を流します。教師だった方であれば、教え子たちのメッセージを壁一面に貼り、教室のような空間を再現することもあります。こうした演出は、遺族にとって「故人の不在」ではなく「故人の存在」を強く再確認する機会となります。しかし、無宗派葬儀を成功させるためには、プロの視点から見ていくつか注意すべき点があります。まず1点目は、メリハリのない式になりがちであるという点です。宗教儀礼には長い年月をかけて完成されたリズムがありますが、無宗派にはそれがありません。そのため、BGMの音量の変化や、照明の演出、ナレーションのタイミングなどを緻密に計算しないと、ダラダラとした雑談会で終わってしまいます。2つ目は、参列者の「何をすればいいのか分からない」という不安を解消することです。献花のタイミングや焼香の有無など、司会者が細かく、かつ自然にアナウンスを入れることが不可欠です。3つ目は、お布施が不要な分、企画料や制作物にお金がかかることを事前にお伝えすることです。10万円の読経料の代わりに、15万円のオリジナル映像を作る。これが無宗派葬儀の現実です。私たちが提供するのは、単なる場所の提供ではなく、遺族が故人と決別し、前を向くためのストーリー作りです。ある時、無宗教葬を行った後に「お坊さんがいなくて寂しいかと思ったけれど、逆に父の声が聞こえてきた気がする」と仰ったお客様がいました。その言葉こそが、無宗派葬儀の真価を物語っていると思います。私たち葬儀社も、これまでの慣習に甘んじることなく、1組ずつの家族に寄り添う高いクリエイティビティが求められる時代になりました。自由であることは、責任を伴うことでもあります。だからこそ、私たちディレクターは、お客様の想いを形にするための最高の黒子でありたいと考えています。これからも、多死社会の中で多様化するお別れのニーズに対し、誠実に向き合い続けていくつもりです。